| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T15-2 (Lecture in Workshop)
宮崎県東諸県郡綾町は、日本最大級の面積で照葉樹自然林が残されており、その恵みを生かした自然生態系農業を中心に、およそ半世紀近くかけて「自然と共生した地域づくり」を全国に先駆けて行ってきた。1984年(昭和59年)には、照葉樹林を生かした観光の拠点として照葉大吊橋を整備したことで、年間100万人以上の観光客が綾を訪れ、自然保護と産業との両立を図ることにつながった。その後、2005年(平成17年)には、綾の照葉樹林を保護・復元することを目的として、九州森林管理局・宮崎県・綾町・日本自然保護協会・てるはの森の会の5者で「綾川流域照葉樹林帯保護・復元計画」の協定が結ばれ、将来にわたって照葉樹林を守る取組が進められている。また、綾町には伝統的生活文化の知恵を大事にし、行政と22の自治公民館の人々がスクラムを組んだ独特の歴史がある。
こうした永年の取り組みが評価され、この地域は2012年7月に、国内で32年ぶり5番目に綾ユネスコエコパーク(Aya Biosphere Reserve)として登録された。登録された範囲は綾町全域に加えて、小林市、西都市、国富町、西米良村の一部を含めた5市町村からなる地域で、核心地域682ha、緩衝地域8,982ha、移行地域4,916haからなり総面積は14,580haである。面積としては国内のユネスコエコパークの中では最も小さい。また、移行地域が含まれるのは綾町のみであることから、現在までの綾ユネスコエコパークの管理運営は綾町1町のみの単独で行っている状況である。
本発表では、登録後約4年が経過した綾ユネスコエコパークにおけるその後の状況や変化、新たな取り組みについて紹介する。そして、ユネスコエコパークの目的である生物多様性の保全、持続可能な地域づくり、学術研究支援を達成する上での、単独自治体のユネスコエコパークならではの課題や今後の方向性について報告する。