| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-028 (Poster presentation)
野生動物は多くの農作物において送粉サービスを提供しており、近年では安定した野生昆虫群集の維持のために農地周辺の景観が着目され始めている。しかし、多くの研究が作物生産に貢献する昆虫としてハナバチ類を対象としており、他の昆虫がもたらす送粉機能はほとんどわかっていない。作物の一つであるソバも野生昆虫による送粉に大きく頼っており、訪花昆虫の種数・個体数は農地周辺の森林等自然地の面積から影響を受けていることが指摘されている。しかし、ソバへ訪花する昆虫は森林を生息地としない昆虫も多く含んでおり、森林以外の景観においても異なるスケールで同様に考慮する必要がある。ハエ目などの小型昆虫はより近隣の水田面積に依存し、かつソバの結実にも寄与していると仮説を立て、野外にて調査を実施した。
本研究は長野県上伊那郡のソバ圃場において、昆虫の採集とソバの結実率の測定を行った。ソバの結実は、網目の大きさが異なる袋をかけることによって、訪花昆虫を体サイズで二段階に分け評価した。この地域は畑と水田、森林や住宅が混在する農地景観をしており、ソバの栽培を夏と秋の二期で行っている。今回はソバの結実率に関する周囲の水田や森林の面積の影響と、季節の効果を評価した。その結果、本調査地でもソバの結実に昆虫が関与し、夏期より秋期にてよりその効果が強いことがわかった。また、結実率と景観の相関についても報告をする。