| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-032  (Poster presentation)

環境DNA分析を用いたため池の生物多様性を規定する要因の解明 −トンボ類および魚類を用いた事例−

*坂田雅之(神戸大・院・発達), 内田圭(横国大・環境情報), 佐藤博俊(龍谷大・理工), 山中裕樹(龍谷大・理工), 中尾遼平(神戸大・院・発達), 源利文(神戸大・院・発達)

生物多様性の損失は重大な問題であり、特に淡水生態系ではその損失が著しい。この淡水生態系の1つにため池の生態系がある。ため池は人工的に作られた環境ながら様々な生物が生息している。なかでもトンボ目(Odonata)に属する多くの種は、ため池を主な生息場としているが、生息地の破壊などによって減少している。そのため、トンボ目多様性を規定する要因を解明することは、ため池の生物多様性保全において重要である。そこで、ため池に生息するトンボ目に対して魚類と非生物要因が与えている影響を調べるために、環境DNAメタバーコーディング手法と構造方程式モデル解析を用いた。環境DNAメタバーコーディング手法は環境水中に含まれる生物由来のDNAを対象とし、次世代シーケンサを用いて対象分類群を網羅的に検出する手法である。本研究ではまず、トンボ目を網羅的に検出するためのユニバーサルプライマーを設計した。その後、兵庫県内のため池100地点の水サンプル中にトンボ目と魚類の環境DNAメタバーコーディング手法を適用し、ため池周辺の環境要因とあわせることで、どのような環境要因がトンボ目の種数を規定しているかを調べた。
本研究では、ため池からトンボ由来の環境DNAを網羅的に検出することができるプライマーの設計および開発に成功した。100地点のため池からは62のトンボ目OTUが得られ、そのうち26のOTUは種同定が可能であった。また、魚類では29種のDNAが検出された。環境要因がトンボ種数に与える影響を調べた結果、兵庫県内のため池に生息するトンボ目の種数は植物構造があると増加し、在来魚種数が増加すると減少することがわかった。これまで様々な要因がトンボ目には影響を与えると言われてきたが、様々な可能性を考慮した上で特に影響を与えている要因を明らかにできたことはため池を利用するトンボ目の保全に大きく貢献できるといえる。


日本生態学会