| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-033 (Poster presentation)
生態系サービスにおいて、供給サービスや調整サービスは実際の供給量や機能を代替する人工物による金銭的評価が進んでいるが、文化的サービスは無形かつ個人の主観が介入しうるため、その評価が遅れている。これまでの文化的サービス評価は、現地でのヒアリングやアンケート調査を中心に行われてきたが、近年のスマートフォンやSNSといったIT技術革新により、より広範囲にわたる文化的サービス評価研究が世界各地で見られるようになっている。
本研究では、このような文化的サービス評価研究への新たなアプローチとして日本のテレビメディアに注目した。自然番組という形で、景観がメディアを通して視聴者に伝わることは、実際に現地に行かずとも審美的価値などの文化的サービスを享受することができ、これまでの文化的サービスとは一線を画した「間接的文化的生態系サービス」となる。サービスを供給する自然番組情報の地理的分布を調べることで、その環境要因や社会的要因との関連性を明らかにし、分布の時間変遷を追うことで自然や生態系に関するテレビメディアのトレンドを把握することが目的である。
今回は、2004年1月~2017年3月のNHKの自然番組情報を取得し、内容から取り上げられる地名を抽出、位置情報として付与しマッピングを行った。番組の放送年で3グループに分類し、番組の地点から3つの空間スケール(5km,10km,15km)で集計した環境要因や社会的要因を説明変数に番組数の統計解析を行い、AICモデル選択により各要因の相対的影響度を検証した。
結果としては、世界遺産や国立公園、百名山といった、人間によって特定の価値を付与された場所に対して番組数が多くなった。これは、人間による価値の付与が自然や生態系に関する社会のトレンドを作りうることを示している。間接的文化サービスは、人々がその場所に行きサービスを享受する直接的文化サービスの導入として作用していることが考えられる。