| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-042 (Poster presentation)
「共生」による正の相互作用は、互いの分化を促進させ、種多様性を高めると言われている。しかし、種多様性に富む岩礁潮間帯において、正の相互作用の理解は、捕食や競争といった負の相互作用に比べ、進んでいない。研究に用いた潮間帯巻貝のスガイ Lunella coreesnsis は、砂混じりの転石地から平磯地まで幅広い環境に生息し、しばしば、貝殻表面に緑藻カイゴロモ Pseudocladophora conchopheriaを付着させる。この付着緑藻は、スガイの貝殻上でのみ生育し、類い希な共生関係のモデルとなり得るが、両者の関係性は未だ明確に分かっていない。
本研究は、干潮時に太陽熱に曝される潮間帯において、カイゴロモの付着がスガイの熱ストレスを軽減させる仮説を検証した。調査と実験の結果、転石地に生息するスガイに比べて、平磯地に生息するスガイは、多くのカイゴロモを貝殻に付着させ、熱曝露時の生存率が高かった。そこで、殻内温度を計測したところ、カイゴロモ付着時に温度上昇が抑制された。この効果は、貝殻を濡らした時に発揮したことから、カイゴロモの保水性によって生じたといえる。以上から仮説は支持され、カイゴロモの存在が、スガイの生息地多様性に寄与したと考えられる。