| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-048  (Poster presentation)

マレーシア、ブルム・テメンゴール森林地帯における環境DNAを用いた陸生哺乳類相解析

*松島慶(京都大学WRC), Shahrul Anuar(USM), Abdul Rashid(PBF), 岸田拓士(京都大学WRC)

野生動物の継続的なモニタリングは、希少種の保全や外来種の管理を行う上で重要である。直接観察法やカメラトラップ法等がこうしたモニタリングに広く用いられている。しかし、直接観察法は人的コストが高く、また希少種との遭遇率の低さから記載漏れを生じてしまう等の問題があり、一方カメラトラップ法では、センサー感度などの問題で撮影が難しいことがある。また、両手法共に、観測された動物種の同定が必ずしも簡易ではない。
水生生物のモニタリングに近年開発された環境DNA解析は、高精度かつ低コストで実施できることから注目を集めている。目視による種同定のような専門的な知識を必要としない点も重要である。陸生生物についてもデータベースさえ存在すれば利用できる可能性が報告されているが、モニタリングへの実用可能性についての検討はあまりされていない。本研究では、マレーシアの塩場(野生動物が集まるミネラルが多く含まれる池や沼)と鴨川での調査を通し、環境DNA解析の陸生生物のモニタリングへの利用における有効な点と問題点について考察を行った。
マレーシアの塩場ではカメラトラップを用いた生物相データも利用可能なため、検出された生物種の比較を行うことで、カメラトラップではなかなか検出できない生物の分布を検出することができた。その一方で、一部のDNA配列はデータベース上に存在せず、正確な種同定を行うことが出来なかったり、コンタミネーションと思われる生物情報も多く含まれたりと、本手法の問題点も明らかになった。鴨川では、下水道の放流口から流出する水と、放流口上流側の河川水において異なる結果が得られ、本手法によって生物種の分布域を推定できる可能性が示唆された。


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