| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-049  (Poster presentation)

色彩多型が鳥類の全球レベルの分布に与える影響

*秦和也, 佐藤恵里, 高橋佑磨, 村上正志(千葉大学)

遺伝的多様性の創出、維持機構の理解は進化生物学の中心的なテーマであり、表現型から種内多様性を評価できる色彩多型に着目して、多型の維持に関する多くの検証が行なわれてきた。一方で、近年は種内多型のもつ生態的機能についても研究が発展している。多型の種は遺伝的変異が高まり、さまざまな環境で適応的になる、すなわち、種内に色彩多型を有する生物種では、戦略やニッチが型によって異なるために、単型の種よりも種の分布域が広くなると予想されている。しかし、この現象については、これまでは限られた地域や種において調べられているのみであり、全球スケールの綱レベルでの解析はなされていない。本研究では、色彩多型の有無が種の分布に影響を与えるかを全球レベルで網羅的に検討する。解析には、全鳥類のおよそ60%にあたる約6000種の鳥類種を用いた。鳥類はそれぞれの種についての充実した生活史形質のデータや分布に関するデータが存在するとともに、全種についての系統関係が明らかにされている。目的変数を各鳥類種の分布面積、NDVI、生物地理区分数とし、説明変数に形質データとして多型の有無と体重、世代時間を用い、重回帰分析を行なった。このとき、系統関係を考慮して各説明変数の効果を検証している。解析の結果、単型種よりも多型種の分布面積が有意に広くなるが、体重や世代時間は分布面積に影響しないことがわかった。これらの結果は、種間・種内相互作用の結果として進化した種内多型が、種の分布範囲の決定に影響することを示唆する。


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