| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-050  (Poster presentation)

小規模ダム河川における底生動物群集多様性への不連続要因の影響

*水守裕一(兵庫県大院・シミュ)

日本の多くの河川には貯水ダムが設置されており、ダム下流で底生生物の種多様性が低下するという問題が報告されている。しかし、その報告の多くは大規模ダムにおいてのもので、小規模ダムについての報告は少ない。また、小規模河川には堰堤などの河川横断物も多く設置されており、河床環境や底生動物に影響を与えていると思われるが、こちらも報告が少ない。本研究では、小規模ダムでも大規模ダムと同じく種の多様性低下等の問題が起こっているのか、河川の不連続要因が河川生態系にどのような影響を与えているのかを調べた。
本研究は、2015年7月に兵庫県姫路市の菅生ダム(夢前川水系菅生川,集水面積8.7km2)の上流地点(St.1),ダム直下地点(St.3),ダム下流地点(Sts.4, 5),流入支川合流地点(St.6),流入支川(St.7)の6地点で調査を行った。ただし、St.3,St.4,St.5の間にはそれぞれ堰堤が設置されている。調査時に電気伝導度やpHなどの環境要因の測定と、付着藻類・流下物・河床材料・底生動物の採集を行った。持ち帰った底生動物サンプルは、目レベルで湿重量を測定し、可能な限り細かい分類レベルで同定・計測し、個体数、種数、多様性指数H’、摂食機能群(FFG)、生活型などを算出した。また、類似度を計算して多次元尺度法NMDSから比較し、PERMANOVAによる場所間の比較を行った。加えて、機能多様性の計算も行った。
底生動物個体数はダム直下のSt.3で最も多く、大きなダム河川での報告と同じ結果になった。一方、種数と多様性指数H’はダム直下地点と他地点とで有意な差はなかった。このことから、小規模ダムの下流では大幅な種多様性の低下が起こっていないことが示唆された。また、堰堤の上流側と下流側を比較した結果、堰堤上流域であるSt.4では造網性トビケラと滑行型が非常に少なくなっていた。これは、堰堤による流速の低下とトロの形成により瀬を好むこれらの種が生活できなくなったものと考えられた。


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