| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-052  (Poster presentation)

標高傾度にそった植物群集の形成メカニズム

*大堂太朗(信州大学大学院), 高橋耕一(信州大学理学部)

植物群集の形成に影響を与える要因を明らかにすることは、地球温暖化などの環境変化が植物群集へ及ぼす影響を予測するのに重要である。これまでに、植物群集の形成に対しては種間競争と環境フィルターが重要な要因であると考えられている。そこで本研究では機能的形質を用いて、標高傾度にそった(1)植物群集の形成に影響を与える環境フィルターと種間競争の相対的重要性の変化と、(2)環境フィルターと種間競争の種多様性との関連性を明らかにすることで、植物群集や種多様性がどのようなプロセスで形成されるかを調査した。本研究では、中部山岳地域の標高傾度 (標高45 m ~ 2500 m) にそって植物群集の形成に影響を与える環境フィルターと種間競争の効果を4つの機能的形質 (植物高、個葉面積、SLA、Nmass) を用いて解析した。解析の結果、標高傾度にそった気象ストレス(強風や低温など)による環境フィルターの機能的形質に対する影響の変化は見られなかったが、植物が利用できる土壌の窒素量が減少するにつれて、個葉形質に対する環境フィルターの効果が大きくなることが示唆された。一方、種間競争については、低標高では光をめぐる一方向的競争の効果が重要であったが、高標高では高い気象ストレスによって一方向的競争が減少した。また、形質分布と種多様性の関係性においては、環境フィルターの効果が増加するにつれて種数は減少し、一方向的競争の減少は草本を増加させ、種の均等度を減少させることが示唆された。したがって、本研究では、(1)個葉形質に対して土壌の窒素量は環境フィルターとして種数を減少させる こと、(2)標高傾度にそった気象ストレスは一方向的競争を減少させ、種の存在量の均等度が減少することが示唆された。以上のように、本研究では、機能的形質を用いた解析によって、標高傾度にそった植物群集の形成に対して、どのような要因が重要かを明らかにした。


日本生態学会