| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-055 (Poster presentation)
野外での生物多様性の維持決定機構の解明には、共存機構を変化させる要因を明らかにする必要がある。競争種間で働く共存機構は安定化メカニズム(種間競争よりも種内競争が強く働くこと)と等質化メカニズム(内的自然増加率の種差が小さいこと)の相対強度を明らかにすることでの評価方法できる。安定化メカニズムの相対強度は、種毎の生息場所における環境ストレスの種間での相対的な強度と、各種のニッチ内での個体群の相対的な位置とともに変化すると予想される。なぜなら、環境ストレスの強い場所に生息する種や、各種のニッチ内で相対的に端に位置する個体群では、内的自然増加率の低下や種間競争の促進を通して、安定化メカニズムが働きにくくなるからである。岩礁潮間帯固着生物群集では、安定化メカニズムの相対強度が高度とともに変化すると考えられる。なぜなら、岩礁潮間帯では高度の上昇に伴って乾燥ストレスが増大し、固着生物は高度に沿ってニッチ分割するからである。そこで本研究では2002年~2017年に北海道東部の太平洋沿岸の25地点の岩礁潮間帯の長期センサスから得た固着生物群集の時系列データを用い、安定化メカニズムの相対強度の尺度として、個体群動態の種間の同調性に対する種毎の貢献度を算出し、それらに対する出現高度の種間での偏差値と出現高度の種内での偏差値による変化を解析した。その結果は仮説を支持し、同調性に対する種毎の貢献度は、出現高度が他種よりも高い種で、各種のニッチ内で相対的に端に位置する個体群ほど大きいことが明らかとなった。本発表では、この結果が生物多様性の維持決定機構に与える示唆について考察する。