| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-060 (Poster presentation)
都市の公園や公共施設には、人工的に造られた水域が付随して存在する。それらは人為的撹乱の大きい場所だが、水生生物の生息地となっている。その中でも、トンボ類は環境に適応して個体群を維持できるため、都市に適応した種も存在する。しかし、それらがどのような特徴を持っているのかについては分かっていない。このようなトンボ類の特徴を調べることは、生物多様性を保全していく上で重要である。そこで本研究は、①都市のトンボ類群集にはどのような要因が影響するのか、②都市に適応したトンボ類はどのような特徴を持っているのか、この2つを解明することを目的とした。
調査は東京都(北多摩地区・南多摩地区・杉並区・渋谷区・新宿区・千代田区)の103の水域で、2017年6月~10月まで実施した。調査水域を毎分20~30mの速さで歩き、トンボ類の種名と個体数を記録し、各種の卵と幼虫の期間を調べた。また、水域内における人の出入りの有無と長期的な排水の有無を人為的撹乱として調査した。
その結果、全103の水域で34種,3733個体のトンボ類が確認され、止水性は29種、流水性は5種がそれぞれ記録された。その中でも、シオカラトンボ、ウスバキトンボ、コシアキトンボ、オオシオカラトンボは特に多くの水域で記録され、これら4種は他の種に比べて卵と幼虫の期間が短かった。解析の結果、種数と個体数は人の出入りにより有意に減少した。また、確認地点数の多かった4種は、シオカラトンボとコシアキトンボが人為的撹乱の影響を受けていたのに対して、ウスバキトンボとオオシオカラトンボは人為的撹乱の影響を受けていなかった。
本研究の結果、①では、種数と個体数は人の出入りの影響を受けていることが、②では都市に適応したトンボ類は水中における生育期間が短いことがそれぞれ明らかになった。