| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-062  (Poster presentation)

攪乱レジームに応じた種プール構成の数理的研究

*上原勇樹(神戸大学大学院), 瀧本岳(東京大学大学院), 丑丸敦史(神戸大学大学院)

群集内の種多様性を決定するメカニズムの解明は、生態学の中心的課題の1つである。高い種多様性の維持メカニズムを説明する仮説の1つとして中規模攪乱仮説が提案されており、様々な生態系での実証研究や理論研究によりこの仮説は支持されてきた(Connell 1978など)。先行研究において種多様性が中規模程度の攪乱下で最大となるという点は共通するが、中規模の程度は対象生態系(地域)ごとに異なっている。この生態系間の差異を生む要因について議論が続いてきた(Kondoh 2001; Adler et al. 2011)。
本研究では、地域間の攪乱レジームの差異が種プール構成種の違いを生むことが、種多様性を最大にする攪乱の程度の地域間差異をもたらすという仮説を立て、数理モデルとシミュレーションを用いてその検証を行った。特に次の2点、①種多様性を最大にする攪乱の程度は、地域固有の攪乱レジームに応じて形成される種プールに依存して異なるのか、②攪乱レジームが異なる場合、形成される地域種プールの構成生物種群は異なる生態特性を持つのかについて解析を行った。
本研究では、Tilman(1994)のモデルを拡張して、異なる生態特性(種内競争での優位性や増殖率、攪乱耐性、死滅率)を持つ生物種の共存モデルを開発し、群集の共存種数や生態特性構成の経時的変化を解析した。モデルではまず、生態特性の異なる多様な生物種が同頻度で存在する始原種プールから、固有の攪乱率を持つ複数の地域に生物種を侵入・競争させ、それぞれ地域種プールを形成した。その後、各地域種プールに連続的な攪乱傾度を与え、攪乱傾度への種数の応答を解析した。さらに、撹乱傾度に対する応答の違いと種プールの生態特性構成の関連について解析した。その 結果、 攪乱率の異なる地域間では種プールの攪乱傾度に対する反応は異なり、種多様性を最も高くする攪乱の程度は異なることが明らかになった。また、種の地域間移動の有無が種プール形成に与える影響についても解析した。


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