| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-131 (Poster presentation)
滋賀県にはオオガタスジシマドジョウCobitis magnostriata(以下、オオガタ)とビワコガタスジシマドジョウC. minamorii oumiensis(コガタ)の2種が分布している。両種は、琵琶湖岸全域に生息していたが、近年急減し、特にコガタの分布は北湖西岸北部にほぼ限定
現在の主要な繁殖地のビオトープ(滋賀県高島市)では、両種が同所的に繁殖していることが明らかになっており、これまで顕在化してこなかった種間相互作用が生じている可能性がある。この種間相互作用はコガタの極端な減少を説明し得る。そこで本研究では、繁殖干渉およびその代替仮説である捕食を通じた見かけの競争と資源競争について調査を行った。
上記ビオトープ池で、2015年から2017年の3年間、調査地に通水している5月から7月にかけて、次の調査を行った。すくい取り調査では、調査地を13区画に分け、両種の成魚・稚魚、および稚魚・卵にとっての捕食者の分布を調査した。また、1週間または2週間に1回の頻度で、取水口と排水口付近に小型定置網を一晩設置し、調査地に遡上する成魚を採捕した。さらに、調査地の水を切った2015年7月4日、2016年7月2日、7月29日、2017年6月30日、7月23日に、取水口と排水口に小型定置網を設置し、流下個体(成魚および稚魚)を採捕した。
その結果、オオガタ成魚の採捕個体数は、2016年・2017年は2015年の2倍以上に増加し、これに比例するように、その稚魚の採捕個体数も増加した。一方、コガタ成魚の採捕個体数は、3年間を通じてほとんど変化しなかったにも関わらず、その稚魚は年を追うごとに少なくなった。また、コガタのメスはほとんどの個体が産卵できずに繁殖期を終えていた。これらのことから、他種頻度の増加によって適応度が減少する種間相互作用である繁殖干渉の存在が強く示唆された。他方、稚魚の餌資源や捕食者の消長では両種の再生産の違いを説明できなかった。