| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-135 (Poster presentation)
コロニーの中に繁殖者を複数含む社会構造、すなわち多女王制は社会性昆虫に広くみられるが、そのような状況では、巣内の繁殖者数が増加するほど密度効果により個体あたりの生産性が低下してしまい、社会性をもつメリットが失われてしまうというジレンマ(reproductivity effect)が報告されてきた。このジレンマは、繁殖者間の血縁度と、それに応じてもたらされる個体の包括適応度によって解消される可能性がある。多女王制を示す産雌性単為生殖種、キイロヒメアリ Monomorium triviale とアミメアリ Pristomyrmex punctatus を用いて、包括適応度の観点から巣の最適繁殖者数を予測するモデルを作成した。京都市にて新規繁殖者の生産時期に両種の巣を採集し、既存・新規それぞれの繁殖者を計数して、巣内の既存繁殖者数と繁殖者1個体あたりの新規繁殖者数の関係を求めた。その結果、いずれの種においてもreproductivity effectが検出された。マイクロサテライトマーカーを利用してコロニー内の既存繁殖者間の血縁度を推定し、上述の繁殖者生産曲線から繁殖者の包括適応度を算出した。血縁度に応じて包括適応度が最大となる既存繁殖者の数を予測した上で、実際の数と比較した結果を報告する。