| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-136 (Poster presentation)
ニホンカモシカ(以下、カモシカ)は、1990年代後半ごろから全国的な生息密度の低下が指摘されている。低密度化の原因として、シカの分布拡大や若齢造林地の減少といった生息環境の変化が考えられるが、これらの科学的な検証はなされていない。こういった生息環境の変化は、カモシカの食性にも変化をもたらしてきた可能性がある。一方、食性の変化は個体群動態にも影響すると考えられることから、カモシカにおいても生息環境の変化が食性の変化を通じて生息密度の変化に影響している可能性がある。本研究では、各カモシカ個体群の食性変化に影響する要因の違いから、カモシカの生息密度の変化に影響を及ぼしている要因を検討することを目的とした。長野県の5つのカモシカ個体群を対象に、H12~27年の冬期に捕獲されたカモシカの胃内容物を用いて、ポイントフレーム法により食性分析を行い、各採食物の出現率を算出した。さらに、一般化線形混合モデルを用いて16年間の食性変化を明らかにするとともに、食性変化に影響している要因の検証を行った。その結果、木本類の採食割合が減少している個体群では、生息密度が長期的に低下している傾向がみられた。さらに、若齢造林地面積やシカの生息密度の変化が食性変化に影響し、特に若齢造林地面積の変化が針葉樹の採食割合の変化に影響していることが示された。