| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-137  (Poster presentation)

河川性魚類の分布規定要因:遊泳能力と種間競争を考慮した検証

*山田太平(北大院・農), 小泉逸郎(北大・地球環境), 卜部浩一(道総研さけます内水試), 中村太士(北大院・農)

 サケ科魚類の分布は流速や水温などによって規定されるが、物理的な環境条件によって優劣関係が変化する条件特異型競争も種分布を決定する要因と考えられている。北海道において、しばしば同所的に生息するオショロコマとアメマスを用いた室内実験において、水温による競争関係の変化が両種の分布を規定する可能性が示されているが、水温と流速の相互作用も含めて検討した研究例はない。水温によって魚類の遊泳能力が変化することが既往研究において解明されていることから、遊泳能力が低下した場合は高い流速に耐えることができなくなると予想される。そこで本研究では、オショロコマとアメマスを対象とし、水温・流速と種間競争の関係を含め、野外における両種の分布パターンを解明するとともに、それらを形成するメカニズムを実験的に検証した。
 野外調査は、オショロコマとアメマスが同所的に生息する空知川水系の支流9サイトに200 mまでの調査区間を設け、エレクトリックフィッシャーを用いて両種を採捕した。また、水温データロガーと流速計を用いて調査期間の水温と各調査日の流速を計測した。室内実験は、魚類の体力を測定するスタミナトンネルを用いて、水温が両種の遊泳能力に与える影響を評価した。低水温区6 ℃、高水温区12 ℃の二つの区分を設け、秒速46.9 ± 3.8 cmの流速下で各個体が流れに逆らって泳いだ時間を計測した。
 室内実験では、低水温区においてオショロコマがアメマスと比較して長時間遊泳する傾向が見られ、水温と流速が競争関係などに影響を及ぼす可能性があることが示唆された。これらの結果を踏まえ、野外での両種の競争関係について検討する。


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