| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-139 (Poster presentation)
近年、外来生物等の有害生物の根絶を目的とした駆除活動が多く行われている。移動分散により繋がった局所個体群からなるメタ個体群の根絶を目的とする場合、捕獲努力量を空間的にどのように配分するかによって駆除活動の効率が変わると考えられる。本研究では、環境条件の異なる2つの生息パッチを利用する局所個体群からなるメタ個体群モデルを用い、2つのパッチに異なる駆除努力量を配分する場合のメタ個体群の根絶可能性を評価した。相平面図を用いたモデル解析から、少なくとも2つの局所安定な平衡点(絶滅平衡点と安定存続平衡点)が同定できた。これらの安定平衡点が共存するとき、メタ個体群の根絶の成否は、初期個体群サイズに依存していた。そこで、絶滅平衡点の誘引域面積をメタ個体群の根絶可能性の指標に用いた。2つのパッチの間で環境に違いがない場合、2つのパッチでの総捕獲努力量を徐々に増加させていくと、絶滅平衡点の誘引領域の面積が増加した。総捕獲努力量が十分大きい場合には、安定存続平衡点が消滅し、絶滅平衡点のみが存在した。2つのパッチの環境条件が同じ場合には、ある総捕獲努力量において、絶滅平衡点の誘引領域が最大となるのは、2つのパッチで同じ捕獲努力量を加えたときとなっていた。捕獲努力量の配分が均等でなくなるほど、絶滅平衡点の誘引領域が減少しメタ個体群の根絶はより困難となっていた。しかし、生物のパッチ間の移動分散が高いほど、捕獲努力量の偏りの影響は小さくなっていた。2つのパッチの間で環境条件に違いがある場合には、生物にとっての環境がより良いパッチに、より高い捕獲努力量を傾けたほうが、根絶はより起こりやすくなっていた。しかし、環境のより良いパッチに全捕獲努力量を傾けると根絶はむしろ難しくなっていた。以上の結果は、メタ個体群の効率的な根絶のためには、捕獲努力量の空間配分が極めて重要であることを示している。