| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-145 (Poster presentation)
演者らは岩手県大槌湾の潮下帯岩礁において、潜水によりサンカクフジツボの個体群動態を継続的に調査してきた。調査では方形枠を基質上に配置し、その枠内の画像撮影のみを行っている。得られた画像を目視によって解析して、サンカクフジツボの殻底面積、個体数を計測しているが、時間的制約の中で計測に要する労力が大きいことが問題となっていた。
一方、画像認識技術が近年急速に進歩し、さまざまな分野に応用されている。そこで本研究では、画像認識技術を用いてサンカクフジツボの殻底面積や個体数の自動計測を行うことを目的とし、その第一段階として、画像から自動でフジツボ生存個体・死殻・岩盤面を区別する3クラス分類器を構築した。
通年の調査によって得た画像から、生存個体・死殻・岩盤面に分類済みの画像を抽出し、各ラベルの画像を約13,000枚用意した。各画像から輝度の変化をもとにしたLBP特徴量を計算しベクトル化した後、機械学習(RBF-SVM)を用いて特徴量とラベルの関係性を2段階で学習させた。まず、10%の画像データのみを用いて分類器の学習を行い、RBF-SVMのハイパーパラメータCとγを指数的に変化させるグリッドサーチによって、最も正答率が高くなるようなパラメータの組み合わせ(C= 1.0×103、γ=1.0×10-5)を求めた。これらのパラメータを用いて改めて95%の画像データを用いて分類器の学習を行い、残り5%の画像データを用いて分類器の正答率を計算した。
得られた分類器の正答率は全体で72.1%であり、ランダムに分類する場合(33.3%)を大きく上回った。ラベルごとの個別の正答率は、生存個体では69%、死殻では61%、岩盤面では77%であった。
正答率が低い要因として、学習に用いた画像の解像度が揃っていなかったことや、特徴量のベクトル化方法の特性上、向きがそろってない画像はうまく分類できなかったことが挙げられる。これらの点を改善することで、さらに分類器の性能を向上させることが期待される。