| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-148  (Poster presentation)

リス科における個体群統計量の定量的解析

*谷尾伊織(北海道大学)

リス科は世界中に広く分布する動物で、樹上性、地上性など多様な生活史を有している。生活史の違いは個体群の成長率や動態に大きく影響するため、その性質と傾向を把握することは、個体群生態学において、そして動物個体群の保全や管理において重要である。
本研究では、リス科の個体群成長に各生育段階の繁殖率や生存率などの生活史パラメータが与える影響を定量的に解析し、比較することを目的とした。エゾリス(ユーラシア大陸に広く分布するキタリスの亜種, Sciurus vulgaris orientis)の生活史パラメータとリス科における個体群の特性に関する知見を得るために、1)北海道帯広市緑ヶ丘公園において、エゾリスの生存率を標識再捕獲法と標識再識別法を用いて推定し、2)リス科における個体群統計量(個体群成長率、感度など)を、個体群行列モデルを用いて計算し、3)調査から得た生活史パラメータを用いてエゾリスの個体群統計量を求め、4)リス科10種の個体群成長率に対して各生活史パラメータが与える影響を、生命表反応解析を用いて明らかにした。
 個体群行列モデルによる解析には、調査から得られたエゾリスと、オープンデータであるCOMADREから得たリス科9種の行列データを用いた。個体群成長率を求めた結果では、10種のリスのうち6種で個体群成長率が1を下回ったのに対し、キンイロジリスでは2を超え、非常に高い値を示した。生命表反応解析では、個体群成長率が1番高かったキンイロジリスの個体群成長率には、リス科9種の平均行列に比べて繁殖率の大きさが大きく寄与していた。反対に、個体群成長率が最も低かったダグラスリスの個体群成長率の低さは、リス科の平均的な行列に対する幼獣の生存率の低さが主な要因という結果であった。また、リス科の平均行列に対するエゾリスの生命表反応解析では、ダグラスリスの結果と同様に、エゾリスの幼獣の生存率の低さが個体群成長率に影響を及ぼす主な要因であることが分かった。


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