| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-150 (Poster presentation)
国内の森林の約4割を占める人工林は,コウモリの生息地として低質と考えられているが,そのコウモリ相や活動量に関する研究は限られている.特に、人工林の大部分を占めるスギ・ヒノキ林については,コウモリの生息地として評価した研究はほとんどない.一方,海外の研究ではコウモリの活動は人工林の林分構造などから影響を受けることが知られている.そこで,本研究ではスギ・ヒノキ人工林において,林分構造や皆伐がコウモリの活動量にどのような影響を与えるかについて明らかにすることを目的とした.
栃木県日光市,矢板市,塩谷町の皆伐地を含むスギ・ヒノキ人工林の,それぞれ6,9,10地点で,2017年6月~9月に各地点1晩ずつ音声調査を行った.音声調査は,コウモリ類が飛翔中に発する超音波を録音しその頻度を量る方法である.録音した音声は Jones et al, (2013) をもとにパルスの周波数帯と形状から,高く定常的な声(A),低く定常的な声(B),変調から定常的になる声(C),変調のある声(D)に分類した.また,毎木調査により各地点の胸高断面積(BA)と立木密度を求めた.林分構造と皆伐のコウモリの活動量に与える影響を検討するために,それぞれについて負の二項分布を仮定した一般化線形混合モデルを用いた.
林分構造に関する統計解析の結果,Bタイプの活動量について立木密度が負の効果,Dタイプの活動量ではBAが正の効果となった.この結果から,Bタイプのコウモリの活動量は高密度林分で減少し,Dタイプのコウモリの活動量はBAが大きい成熟した林分で増加することが示された.皆伐の効果については,Bタイプの活動量について正の効果が見られたが,Dタイプの活動量では影響がなかった.
本研究では,スギ・ヒノキ人工林において林分構造や皆伐が活動量に与える影響は,パルスタイプで大きく異なった.人工林を様々なパルスタイプのコウモリが利用するためには、多様な林分構造を目指した管理が必要と考えられる.