| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-205 (Poster presentation)
広域分布種を対象にした保全管理は、まず分布域全体の生息状況を把握し、対策を実施する地域を選定する必要がある。生息状況の把握には、生物の分布情報と環境要因との関係から未調査地域を含めた広域での種の分布を予測する種分布モデル(SDMs)が利用されてきた。しかし、外来種との種間相互作用により急激に減少しつつある在来種の生息状況を把握する際には生物的要因を組み入れたSDMsが必要となるが、特に個体数に着目し生物的要因を組み入れた研究は少ない。
本研究では、日本広域に分布する在来種ニホンイシガメ、外来種クサガメ及びミシシッピアカミミガメの3種を対象に生息状況把握を行い、個体数に影響する要因を明らかにすることを目的とした。特に、外来カメ類が在来種に与える影響を評価した。各カメ類の捕獲数を応答変数に、地形要因、気候要因及び土地利用要因の計7変数を説明変数、罠数をオフセット項に組み入れた一般化線形混合モデルを構築し、各カメ類の個体数分布(CPUE : 1罠日当たりの捕獲数で表される密度指標)を広域的に予測した。在来種に関しては上記7変数に加え、クサガメのCPUEとその2乗項、アカミミガメのCPUEを説明変数に組み入れた。
ニホンイシガメの個体数には、生物的要因としてクサガメのCPUEとその2乗項がそれぞれ有意に正と負に相関し、クサガメがイシガメに与える影響が示唆された。この結果からクサガメの個体数がある程度まではイシガメに対してあまり影響を与えないが、クサガメの個体数がある値以上になるとイシガメに対して負の影響を与え始める可能性が予想された。カメ類3種の個体数分布を予測したところ、イシガメの個体数が多い地域は外来種の個体数が少ない地域に限定される傾向が見られた。これらの結果から、広域分布するカメ類の保全管理を重点的に行なうべき地域を選定した。