| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-211 (Poster presentation)
近年、河川敷周辺の河川固有植物や草原性植物の減少や絶滅が問題となっている。発表者らは予備調査において天竜川水系の河川敷でカワラサイコやツメレンゲ等の河川固有植物、またタカサゴソウやスズサイコ等の草原性の希少草本植物の生育を確認した。一方、希少植物の競合種となると考えられる特定外来生物のオオキンケイギクなどの外来植物を確認した。そこで本研究では、天竜川水系の河川敷における希少植物が生育する群落の特性や外来植物との関係、また立地環境条件を把握し、これらの保全策を検討することを目的とした。
調査プロットの面積は4㎡で、高水敷と低水敷で計28プロットを設置した。群落調査は植物社会学的植生調査法を用いて2017年7~8月に実施した。また、群落の立地環境条件を把握するために、相対光量子密度および土壌硬度、粒度組成の調査を同9~11月に実施した。
全出現種は72種だった。各プロットにおける相対積算優占度(SDR₂´)を使用しTWINSPAN解析を行った。全プロットは、高水敷の3群落型と低水敷の2群落型の計5群落型に、また出現種は8種群に分類された。スズサイコが優占したスズサイコ・シバ型では全群落型の共通種であるオオキンケイギクの優占度が高く、希少植物の競合種として認識された。タカサゴソウやイヌハギが優占したタカサゴソウ・イヌハギ・ハリエンジュ型では高水敷でハリエンジュの優占度が高かった。また、草原性植物が集中して生育するカワラナデシコ・オカルガヤ型では、イタチハギの優占度が高かった。これら外来木本や、さらに高水敷の共通種である在来木本のテリハノイバラによる低木林化が進んでいると考えられた。低水敷のカワラヨモギ・ツルヨシ型では、ツルヨシや一・二年生植物が競合種になっていると考えられた。カワラサイコ・ハリエンジュ型では、ハリエンジュの優占度が最も高く、低水敷の安定化が進んでいると指摘された。