| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-212 (Poster presentation)
カワラバッタは河川中流域の砂礫河原を代表するバッタ類である。しかし、本種は各地で減少・絶滅が問題となっており、絶滅危惧種に指定されている。本種の保全には群集や種生態学的知見の収集が必要とされるが、詳しい生息条件や食性に関する情報は少ない。
そこで本研究の目的は、当研究室の奥村・大窪(2017)の先行研究に引き続き、長野県上伊那地方のカワラバッタについて、生息状況と立地環境条件を解明することから、本種の保全策を検討することとした。
昆虫類の生息状況は年次変動も大きいことから、今年度は昨年度(奥村・大窪 2017)と同様の三峰川水系4地区(A~D)に加え、さらに同天竜川水系で約10㎞南部の太田切川において新規2地区(E、F)の計6地区で調査を実施した。また、各調査地には25㎡のプロットを10個連続で設置した。繁殖調査としては、幼虫および成虫の個体数を目視によりカウントした。さらに分布調査では、群集調査として、バッタ類の出現種名と個体数を目視で記録、カウントした。また、ベイトトラップ法を用いてコオロギ類を調査した。
立地環境については、植物社会学的手法にて植生調査を実施した。各プロットに1㎡の枠を設置し、出現種、各種の被度、群度、植物高及び群落の植被率を測定した。さらに、各プロットの四隅に50cm四方の枠を設置し、表層の礫を地質学的区分により目視で分類した。
昨年度と同様の三峰川水系3地区と新規1地区でカワラバッタの幼虫と成虫が複数個体出現し、これらの場所は繁殖地、また生息地として機能していることが考えられた。太田切川での生息地は新産地であった。カワラバッタの生息地条件として重要な項目は、本種の餌資源(奥村・大窪 2017)であるキク科在来植物のカワラニガナやカワラヨモギが優占していること、また植被率が低いこと、さらに出現植物種数の少ないことが考えられた。