| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-213  (Poster presentation)

延焼から4年経過した霧ヶ峰高原における草原植生の現状

*中田泰地, 大窪久美子(信州大・農)

霧ヶ峰高原は本州中部を代表する半自然草原が分布するが、植生管理の停止による遷移進行等によって、草原性植物の保全が課題となっている。2013年に諏訪市による火入れ事業が一部で実施されたが、あいにくの強風で延焼し、その総面積は約220haに及んだ。そこで延焼による草原植生への影響を検証する調査が2013年には長野県で、2014年には本研究室で実施された。その結果、両年共に草原群落への延焼の影響は、ほとんど確認されなかった。しかしながら、火入れに関する知見は少ないため、本研究の目的は4年経過した草原群落への延焼の影響を検証することとした。
調査地は伊那丸富士見台で、先行研究で設定されたシカ柵および延焼の有無でA(シカ柵内・延焼)とB(シカ柵内、非延焼)、C(シカ柵外、延焼)とD(シカ柵外・非延焼)の計4区で各9プロット、計36プロットで調査を実施した。各プロットの面積は4㎡である。
植生調査は植物社会学的植生調査法を用い、各プロット内の出現種及び被度、群度、植物高を記録、測定した。また立地環境を把握するため、土壌含水率及び土壌硬度、相対光量子密度を反復測定した。
上記の結果、全出現種数は延焼当年の2013年、翌年2014年より減少した。これは調査時期が先行研究と異なり、フェノロジーの早い植物種の枯死等によると考えられた。ススキやヨツバヒヨドリなど出現頻度70%以上の種は初年度から継続して、4年後も優占した。4年後の積算優占度(SDR₂)の合計値は減少しており、これは出現種数の減少によるものと考えられた。外来植物の出現数は少なく、在来種で構成された草原群落が維持されたといえる。また、今年度の土壌含水率と相対光量子束密度の値は有意に高かった。以上より延焼から4年経過した草原植生への延焼の影響は確認されなかったが、今後も適正な調査時期によるモニタリングの実施が必要と考えられた。


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