| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-218 (Poster presentation)
環境 DNA 分析手法は環境水中の DNA 断片を検出することで、生物の在不在や多様性を調査 するのに有用である。しかし、行動や状態によって DNA は変化しないため、環境 DNA 分析手 法で生物の行動や状態を推定することは難しい。一方、RNA は生物の行動や状態に応じて転写 されるため、環境水中から環境 RNA を検出することで生物の行動や状態を推定できる可能性が ある。本研究ではコイ(Cyprinus carpio)の繁殖行動を推定する環境 RNA のマーカーの開発 及びその検出を行った。まず、ハウスキーピング遺伝子と産卵、卵、仔魚に特異的に発現する 遺伝子を特異的に増幅するプライマーを開発した。次に、実験池と水槽を用いて、産卵直前、 産卵直後、卵、仔魚、成魚の生息する環境水に由来するサンプルを得た。最後に各サンプルに ついてターゲットとなる環境 RNA が検出されたか検証を行い、検出された環境 RNA が繁殖行 動に特異的であるか評価した。その結果、cathepsin L は産卵直前および産卵直後の環境水から、 Egg24 は産卵直後の環境水から検出された。そのため、cathepsin L、Egg24 は産卵前後を推定 するための有用なマーカーであることが示唆された。また、ハウスキーピング遺伝子である beta-actin は成魚の環境水からは検出されず、産卵直後の環境水から検出された。このことから、 ハウスキーピング遺伝子であっても常に検出されるとは限らず、生物の活動を反映する可能性 がある。以上の結果から、環境 RNA を水サンプルから検出することで繁殖行動を推定できるこ とが示唆された。そのため、水サンプルから生物の行動や状態を推定できる可能性が高まった。