| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-221 (Poster presentation)
河川地域に生息するトンボ類の減少が問題とされており、その保全策が急務である。そこで本研究では、異なる立地条件の河川地域におけるトンボ類の群集構造を把握し、さらに繁殖に重要な産卵基質となる植物種の選択性を考察することから、保全策を検討することを目的とした。
調査地は立地条件(市街地および中山間地)とワンドの有無を考慮し、合計7地区を設定した。群集調査と環境要因(流速・天空率・川岸の植被率)の調査を行った。群集調査の調査期間は2017年5月から9月まで、環境要因調査は2017年7月から9月まで行った。産卵する植物体の選択性は観察調査にて観察対象種(イトトンボ類・カワトンボ類)で産卵行動をしている個体を探し、トンボ類の種名、植物種名、産卵時間を記録した。調査期間は2017年8月から9月まで行った。
トンボ類は合計37種、2117個体を記録した。中山間地の群集では、標高が高く、樹林に囲まれた水域で生息する種で、また市街地では植物組織内産卵する種で構成された。中山間地では樹林が多く、市街地は河畔や水田などの土地利用形態が豊富であったことから土地利用形態に影響されたと考えられた。市街地でワンドがある地区でトンボ類の出現種数が高い傾向があり、ワンドの保全が重要だと考えられた。DCA解析の結果、群集と天空率に正の相関があった。これはトンボ類の水面認識や体温調節機能と光環境とが密接に関係することが要因と考えられた。産卵する植物体の選択性は、トンボ種全体でツルヨシやヒシなどの植物体に隙間のある植物への産卵が頻繁に行われていたことから、植物体に隙間のある植物が繁殖環境に適していると考えられた。また、産卵基質として外来植物のオランダガラシが利用されており、本来は自生の水生植物が繁殖環境として機能すべきであり、これは保全生態学的な課題として指摘された。