| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-222  (Poster presentation)

シチズンサイエンスにおけるシチズンは誰かーバードリサーチ東京都島嶼部鳥類繁殖分布調査の事例ー

*高田陽, 倉本宣(明大・農)

市民科学は欧米を中心にITの発展とともに活発化している。一方で、研究者と参加者の関係性が見直されており、社会での大きな流れとなるためにも運営側が参加者の意識を理解することが重要視されている。欧米では近年こういった参加者の参加動機に関する研究が活発に行われている。地域によって文化的背景が異なるため参加動機は異なるという指摘もされているが東アジア圏ではそのような研究は少ない。今後市民科学が国内で発展するためにも参加者の意識構造の理解は重要である。
 そこで本研究では、市民科学プロジェクトにおいてどのような市民が参加しているのか、また、彼らがどのような参加動機によって参加しているのかを目的として、アンケート調査を用いて参加者の科学やボランティアに対する関心とプロジェクトへの参加動機を調査した。また一部の参加者に聞き取り調査を行い参加動機と個人の興味との因果関係を明らかにした。対象とした市民科学プロジェクトはNPO法人バードリサーチが行っている東京都鳥類繁殖分布調査島嶼部という伊豆諸島で行われた一斉鳥類モニタリング調査である。参加者の特徴として、科学に対する関心は高いが、ボランティアに対する関心は高くないことが分かった。参加動機として多くの参加者が「調査目的への共感」を挙げていた。聞き取り調査では、「調査目的の共感」と同時に「自然が楽しめる」「勉強になる」などの要因を重視していた参加者が多かった。参加者の意識構造について、聞き取り調査で得られた因果関係を基に仮説モデルを作成し、アンケート調査の結果を用いて構造方程式モデリングを使用し解析を行った。これらから、参加者が参加するには「調査目的への共感」と「個人の楽しみ」の二つが揃うことが重要であるという意識構造が示唆された。また「科学への関心」が「調査の有効性の認知」を生み、さらに「調査目的への共感」を生むという意識構造が示唆された。


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