| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-226 (Poster presentation)
東京都湾岸部では20世紀を中心にごみ処理施設や港湾の整備、臨海部再開発への寄与を目的とした埋立地の造成が行われ、野生生物のハビタットの機能を意識した整備、管理が行われる公園緑地が見られるようになった。東京都大田区に位置する大井ふ頭では、埋立地造成後に多様な自然環境が形成された。現在では都立東京港野鳥公園として保全されており、樹林地などかつて存在しなかった自然環境も人工的に創出され、生物ハビタットとしての機能を果たしている。
本研究は水域とその周辺の環境を複合的に利用することで知られるトンボ類を対象とし、東京港野鳥公園のトンボ類群集構造について調査し、埋立地の緑地がトンボ類に対して果たす役割を解明することを目的とした。
東京港野鳥公園の自然生態園にて、ルートセンサス法によりトンボ類の種構成を調査するととともに、既往の文献記録により東京都内区部の緑地3か所(皇居・自然教育園・明治神宮)と比較してトンボ類の種構成の評価を行った。その結果、当地では都市部で優占する種に並び、植生が豊かな自然度の高い水域を好む種の個体数が多く、種数についても都内区部の緑地としては多様なトンボ類の種が維持されていることが示唆された。また環境調査から、当地は比較地の緑地よりも樹林環境が少なく開けた環境であること及び抽水植物が豊富に存在することが明らかになった。これらの環境要因が当地のトンボ類の群集構造を特徴づけていると考えられた。
今後は埋立地における他の緑地や比較に用いた緑地などについても定量的な調査を行うことで、埋立地の緑地において誘致可能な種や他の緑地とのトンボ類のネットワークについて明らかにしていく必要がある。