| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-238  (Poster presentation)

北海道の在来タンポポ3種の雑種形成について

*齋藤輝志(北教大旭川校), 伊東明(大阪市大・院理), 今村彰生(北教大旭川校)

 在来の2倍体タンポポと外来の3倍体セイヨウタンポポの間に雑種形成が確認されて以降、在来タンポポへの繁殖干渉などの影響が危惧されている。一方、北海道の在来2倍体種の雑種形成は報告されていない。その原因として北海道の在来2倍体種の生育地が高山や蛇紋岩地帯など局所的なため、雑種形成が為されなかったのか、単に観察不足なのか、解明する必要がある。そこで本研究では、北海道の在来種のエゾタンポポ、2倍体のオオタカネタンポポ、北海道教育大学旭川校内の不明種の3種を対象に、雑種形成の有無の解明を目指した。雑種形成の解明のため、フローサイトメーターによる種子の核DNA量の解析と倍数性判定を行った。エゾタンポポは上川郡鷹栖町、オオタカネタンポポは芦別市滝里湖と旭川市オイチャヌンペ川、不明種は旭川市の北海道教育大学旭川校、セイヨウタンポポはそれぞれの在来種の周囲にて種子を採取した。エゾタンポポとセイヨウタンポポのDNA総量はそれぞれ、4.52 - 5.16 pgと2.22 - 2.46 pgであった。オオタカネタンポポのDNA総量は二峰性を示し、2.6 pg未満を第1群、3.3 pg以上を第2群としてt検定を行った結果、2群の間に有意差が検出された。一方、不明種のDNA総量は2.25 - 3.12 pgであった。不明種とセイヨウタンポポおよび不明種とエゾタンポポのDNA総量の間でt検定を行った結果、それぞれ有意差が検出された。エゾタンポポとセイヨウタンポポの倍数体当たりのDNA量 (C値) はそれぞれ1C = 1.22 pgと1C = 0.77 pgであり、これらは4倍体と3倍体と考えられ、雑種形成はしていないといえる。オオタカネタンポポの第2群は、雑種識別法に従い4倍体雑種と考えられる。一方、不明種はDNA総量からみて2倍体である可能性が高く、さらに形態からは日本未記載種の可能性が示唆されたが、染色体数の観察が未了であり、確証は得られなかった。以上から、外来タンポポと2倍体在来種との雑種形成が北海道で初めて確認された。


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