| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-239  (Poster presentation)

なぜ人は森で感動するのだろう~脳波からみる行動別心理的効果の違い~

*野田佳愛(京大院・農), 伊勢武史(京大・フィールド研)

 ストレスを抱えやすい現代社会では、森林の癒し効果に対する期待は高い。実際、森林浴には癒し効果があり、ストレスを緩和させることが既存研究によって明らかにされている。しかし、具体的に森林内のどのような状況が、どのような心理的効果を生み出すのかは明らかにされていないのが現状である。そこで本研究では、オンサイトで使用可能なワイヤレスのポータブル脳波計(MindWave Mobile、NeuroSky社)を使用することで、森林内での行動による心理的効果を集中度、リラックス度の点から評価することを目的とした。
 このポータブル脳波計は、測定した脳波から独自のアルゴリズムで集中度およびリラックス度を算出し、それぞれを指標として1~100の段階で毎秒表示する。京都大学芦生研究林において2017年8~9月に大学生計28名を対象に3回実験を行った。調査内容は5種類の行動における各60秒間の脳波測定とアンケート調査である。MindWave Mobileを装着した被験者に5種類の行動(巨木を見る、立ったまま目をつぶる、川に手を浸す、葉を触りながら観察する、自由行動)を指示して、それぞれ60秒間ずつ脳波を測定した。また、アンケート調査では属性・経験に関する6項目について回答を指示した。
 分析の結果、森林が人に与える心理的効果は行動によって異なり、森林内で目を閉じたり川の水に触れたりするとリラックス度が高いことが明らかになった。特に触覚の刺激が心理的効果に影響する可能性が示唆された。また、属性や経験が心理的効果に影響を与えていることが示唆された。
 ポータブル脳波計を用いた森林の研究は、今まで困難であった森林浴中のリアルタイムの測定を可能とするため、どのような属性の人でも森林の癒し効果を最大限に享受できる森林浴を明らかにすることが期待される。


日本生態学会