| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-261 (Poster presentation)
細根は森林の炭素循環において重要な役割を担っている。しかし、炭素隔離の有効な手段として注目されているバイオチャーを散布した森林において、その動態は未だ十分に理解されていない。本研究ではバイオチャーを散布したコナラ林において、2016年2月から2017年5月までの期間、直径2mm未満の細根の動態を調査した。
2015年11月に12点のコドラートを設置し、1haあたりのバイオチャー散布量に応じて0t区、5t区、10t区とした。各区画でイングロースコアおよびルートバッグを設置し、3ヶ月間隔で細根の生産量および純一次生産量(細根NPP)を推定した。
各測定期間においてバイオチャー散布量による細根生産量に有意な差は見られなかったが、年積算値は散布量が増加することで低下する傾向が見られ、2016年の細根NPPは0t区、5t区、10t区でそれぞれ0.77、0.74、0.54tC ha-1 year-1と見積もられた。このことから、バイオチャー散布量が増加することで細根の生産が抑制される傾向が見られ、その影響は10t ha-1の散布でより強くなることが示された。同調査区における窒素の調査から、バイオチャー散布によって窒素の無機化が抑制されることが明らかとなり、散布区での細根生産の抑制は土壌中の無機態窒素量の減少に起因すると推察される。また、生態系全体のNPPに対する細根NPPの寄与率は0、5、10t区でそれぞれ8.1、8.8、5.8%であった。したがって、10t ha-1のバイオチャー散布は植物が固定した炭素の細根への分配率を低下させることが考えられる。このことから、バイオチャー散布による土壌への炭素貯留能は、バイオチャーによる炭素投入と細根による固定量の減少とのトレードオフによって再推定される必要性が示唆された。