| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-272 (Poster presentation)
バイオチャーを散布した森林では土壌呼吸(SR)が増加することが知られている。SRの構成要素である従属栄養生物呼吸(HR)と植物(独立栄養生物)の根呼吸(RR)は呼吸基質が異なるため、環境応答性が異なると考えられる。ところが、バイオチャー散布が森林におけるHRとRRにどのような影響を及ぼすのかについては明らかになっていない。したがって本研究ではバイオチャーを散布した森林においてHRおよびRRを推定し、SRの変動要因を明らかにした。
調査は埼玉県本庄市の暖温帯コナラ林において2017年8月から11月にかけて行なった。20 m四方のコドラートを12点設置し、1haあたりのバイオチャー散布量ごとに0t区、5t区、10t区とした。各区画でトレンチ法を用いてSRに対するHRの寄与率を推定し、HRとRRを分離した。
バイオチャーの散布により、測定した全ての月でSRおよびHRは増加したが、RRは減少した。したがって、バイオチャー散布によるSRの増加はHRの増加に起因すると考えられる。SRに対するHRの寄与率の平均値は、0t区で64%(51〜77%)で、夏に高く冬に低い値をとる明瞭な季節変化を示したが、5t区で83%(73〜93%)、10t区で82%(70〜87%)となり、バイオチャー散布区では明瞭な季節変化は見られなかった。従来の研究では、バイオチャー散布地における生態系純生産量(NEP)の推定においても非散布地におけるHR寄与率を用いていた。しかし、本研究のHR寄与率を用いて推定した結果、従来の手法ではNEPを過大評価していたことが明らかとなった。
以上のことからバイオチャー散布によるSRの増加はHRの増加に起因することが明らかとなった。また、バイオチャー散布地におけるNEPの推定にはHRの変化を十分考慮する必要性が示唆された。