| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-283  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林におけるバイオチャー散布が土壌動物相とリター分解に及ぼす影響

*市川順也(早稲田大・教育), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 山田理香(早稲田大・院・先進), 増田信悟(早稲田大・院・先進), 月森勇気(早稲田大・院・先進), 小泉博(早稲田大・教育)

 森林生態系の炭素循環において、土壌動物はリターを破砕し、微生物の有機物分解を促進させる役割を担う。バイオチャーの土壌改良効果はこれに深く関係し、土壌に散布することで微生物が増殖することが知られている。したがってこの効果は土壌動物にも影響を与えると言われている。
 本研究ではこの土壌動物に焦点を当てて、バイオチャー散布が土壌動物のリター分解と生物相にどのような影響を与えるかを調査した。
 埼玉県本庄市の暖温帯コナラ林において、異なる散布量のバイオチャー散布区画(0, 5, 10 t / ha)を設けた(n=4)。異なるメッシュ幅(<0.1, 2, 6 mm)のリターバッグにおけるリター減少率の変化と、分類群ごとの土壌動物個体数(未分解リター10 g D.W.あたり)の結果から、大きさ・食性別に土壌動物によるリター分解への関与を調べた。また環境要因(pH、硬度)の測定結果と個体数を比較することで、土壌動物の生息環境についても検討した。
 バイオチャー散布による土壌動物相・リター分解への影響を見てみると、リター減少率は散布区と非散布区のいずれにおいても有意な差は見られなかった。しかし土壌動物相に関しては、優占種であるダニ目とトビムシ目において、バイオチャーの有無で個体数の違いが確認された。また大きさ・食性別に土壌動物相とリター分解の関係を調べたところ、分解初期では小~中型動物(~2 mm)であるトビムシの菌食作用と肉食性ダニの捕食作用が、また分解後期では腐食性の大型動物(2~6 mm)によるリター破砕が分解に影響を与えている可能性が見出された。
 また生息環境に関しては、バイオチャーの散布により土壌pHは高く、土壌硬度は低くなっていた。土壌動物の個体数と関連させると、バイオチャー散布による硬度の低下が個体数増加の一因であることが示唆され、特にササラダニ亜目ではその傾向が顕著であった。


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