| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-286 (Poster presentation)
地球温暖化の緩和策として、植物遺体を低酸素条件下で熱分解して生産されたバイオチャーの活用が注目されている。バイオチャーはその多孔質な構造により、土壌微生物の増殖や土壌の保水性向上といった土壌改良効果をもたらす。CO2の主要な吸収源である森林にそれを散布することで、土壌呼吸速度(SR)が増加するという報告がなされているが、SRの日変化や環境要因に対する応答に着目した研究は少ない。本研究では自動開閉チャンバーを用いてSRを連続的に測定することで、バイオチャー散布がSRの日変化やSRと環境要因との関係に与える影響を明らかにすることを目的とした。
調査は埼玉県本庄市のコナラを優占種とする温帯落葉広葉樹林を対象とした。林内に20m四方のコドラートを用意し、バイオチャー散布区(5・10 t/ha)と非散布区(C区)を設置した。各区画にCO2センサーを備えた自動開閉チャンバーを設置し、SRを20分間隔で6・8月 (夏季) および10・11月 (秋期) に測定した。それと同時に、環境要因として地下5 cmにおける地温と土壌含水率、さらに降水量を測定した。
SRはC区・散布区ともに6時から16時にかけて増加し、翌日の6時にかけて減少した。その増減は、地温の影響を強く受けていた。また、両区画のSRの日変化パターンに大きな差は認められなかった。一方で、SRはどの期間においても散布区のほうがC区よりも高い傾向にあった。これは散布により従属栄養生物呼吸が増加したためであると考えられる。また、降雨時のSRについては、降水量の増加につれてC区で減少し、散布区で増加する傾向にあった。これはバイオチャーの孔内に雨水が吸着され、下層の土壌間隙が雨水で飽和しない結果、下層からのCO2放出が阻害されなかったことに起因すると考えられる。したがって、バイオチャーはSRの日変化自体に大きな影響を及ぼさないが、SRの絶対値や降雨イベントに対するSRの応答に影響を与えることが示された。