| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-290  (Poster presentation)

衛星画像と数値標高モデルを用いた東シベリアのタイガ・ツンドラ境界における景観スケールの植生分布の解析とメタン放出量推定への応用

*両角友喜(北海道大学), 新宮原諒(北海道大学), 小林秀樹(海洋研究開発機構), 鈴木力英(海洋研究開発機構), 鄭峻介(北海道大学), 鷹野真也(北海道大学), Fan, Rong(北海道大学), Maximov, Trofim C.(IBPC), 杉本敦子(北海道大学)

タイガ・ツンドラ境界は北極圏陸域における生態系の広大な推移帯であり、温室効果ガスの一つであるメタン(CH4)の主要な放出源である湿地が多く含まれている。本研究では、景観スケールの標高・地形特性が、植生の空間分布とメタン放出量にどのくらい影響するか明らかにするため、北東シベリア、チョクルダ付近70km四方におけるメタン放出量を推定した。湿地やカラマツ疎林、低木林などの代表的な地点において、CH4フラックスの測定を行った。出現植物種調査に基づき衛星画像を用いた植生分布を示す土地被覆図を作成し、これを組み合わせることでCH4放出量推定をおこなった。本研究では、とくに数値標高モデルを用いて、標高が植生分布とCH4放出の空間的な変動を特徴づけているか検討する。
ALOS AVNIR2衛星画像による植生分布を示す土地被覆図は、複数の植生を含む景観ユニットによって構成すると定義し、線形スペクトル分解を用いて各植生をサブピクセル寄与率として算出した。景観ユニットは15個のユニットに分類され、Lakeside、Mound、Terraceなど地上観測で認識できる地形に対応した。数値標高モデル(AW3D30, JAXA)とこの植生被覆率を比較することで、景観スケールにおける植生の標高に伴う分布パターンが示された。標高0-300mの低地景観において、唯一のタイガ林冠構成種であるカラマツの植生は、氾濫原の周囲に広がる低い河川テラスと、丘陵斜面末端に相当する標高45m付近において2回の出現ピークが観察された。一方抽水植物に覆われた湿地は標高30m以上の立地にはほとんど出現しなくなるという特徴が見られた。丘陵域における湿地の面積が、低標高帯と比較して低いことから、地域CH4放出量は標高に伴い空間的に制限を受けることが示唆された。本研究は周北極圏陸域の植生動態とCH4放出量変動の研究における、タイガ・ツンドラ境界の果たす役割に関する研究の進展に寄与する。


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