| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-291  (Poster presentation)

バイオチャーの散布がコナラ実生の炭素収支に与える影響

*山中椎奈(早稲田大・教育), 坂斉友梨(早稲田大・教育), 棚澤由実菜(早稲田大・教育), 加藤夕貴(早稲田大・教育), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 小泉博(早稲田大・教育)

 生物資源を嫌気的条件下で加熱し炭化させたバイオチャーには、炭素を大気から長期間隔離する効果や、土壌改良により植物の炭素固定を促進させる効果がある。そのためバイオチャーは土壌添加材として生態系に散布されることが多いが、炭素固定量の多い森林での研究例は少ない。そこで炭素収支を実測できるコナラ実生を対象とし、バイオチャー散布が森林生態系(コナラ実生個体群)の炭素収支に与える影響を明らかにすることを目的とした。

 一定の環境条件下で植物体の炭素収支の応答が観測できる室内実験において、野外から深さ5 cmごとに採取した土壌を入れた水槽を3台設置した。そこに予め発芽させたコナラ実生を15本ずつ植え、森林生態系を再現した。このコナラ実生区画に0、5、10 t/haのバイオチャーを散布した。

 生態系純生産(NEP)、生態系呼吸(Reco)は各区画10点、土壌呼吸(SR)は各区画3点ずつ2週間に1回測定した。コナラ個体の樹高、地際直径は1週間に1回測定した。さらに、植え替えから170日後にコナラを採取し、葉面積、各器官の乾重量も測定した。

 コナラ実生区画のNEP、Reco、GEP、バイオマス量はバイオチャー散布区において非散布区より高い値を示した。また、バイオマス量当たりのNEP、Reco、GEPは各区画間において有意差を示さなかった。つまり、バイオチャー散布区でRecoやGEPが増加したのは、単位面積当たりのバイオマス量が増加したためであると考えられた。また刈り取り時には、栄養塩類の欠乏症状が非散布区のコナラ実生に認められた。したがって、非散布区よりもバイオチャー散布区でバイオマス量が多かったのは、バイオチャーが土壌中に栄養塩類を供給したためであると考えられた。

 以上より、バイオチャーを森林生態系に散布することで土壌に栄養塩類が供給され、コナラ実生のバイオマス量が増加し、NEPも増加することが分かった。


日本生態学会