| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-011 (Poster presentation)
二次遷移における個体間光獲得競争と森林構造の変化
松尾智成、小野田雄介、北山兼弘(京大・農・森林生態)
光競争は二次遷移の駆動要因であり、樹高が高い個体が低い個体を抑圧する一方向競争である。遷移初期では、樹高が高い個体は高いRGR(個体重あたりの成長速度)をもち、森林内の個体サイズの格差は拡大する。しかし、この傾向は遷移後期では当てはまらず、樹高とRGRは相関しないことが知られている。RGRは光獲得効率と光利用効率の積として考えることができる。遷移後期では、樹高が高いほど光獲得効率が高い一方、光利用効率は低く、両者が相殺するためにRGRは樹高に依存しないと言われる。しかし、遷移に伴い光獲得効率と光利用効率がどのように変化し、その結果、なぜRGRの樹高依存性がなくなるのかは分かっていない。本研究の目的は、二次遷移に伴う個体間光獲得競争を定量化し、森林の個体サイズ分布構造の変化を理解することとした。
本研究では、和歌山県の林齢の異なる5地点(20×20m)で毎木調査を行い、樹木の成長速度を求めた。また林内の3次元光環境と各個体の樹冠分布を評価し、個体ごとの光獲得量を求め、また光獲得効率と光利用効率を算出した。
その結果、遷移初期ではRGRは樹高と正の相関があったが、遷移に伴い傾きが減少し、老齢林では無相関または弱い負の相関になった。光獲得効率は、どの森林でも樹高と有意に正の相関を示し、大きな個体ほどバイオマス当たりの光獲得量は増大することが分かった。一方、光獲得効率と樹高の関係の傾きは遷移に伴い減少し、林冠木の光獲得のメリットは逓減することが示された。光利用効率は、どの森林でも樹高と有意に負の相関を示した。また、光利用効率と樹高の関係は、遷移によって変化しなかった。
以上をまとめると、遷移に伴い林冠木の光獲得効率が減る一方、光利用効率は変化しないためRGRは樹高に依存しなくなり、森林の個体サイズ分布の変化は小さくなる。