| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-018 (Poster presentation)
平地造成に伴い発生する人工的な斜面である法面においては,表土侵食防止及び植生回復を主目的として緑化が実施されており,防災機能および管理頻度の少なさなどの理由から自然林に近い群落を緑化目標とすることが望ましいとされている。植栽工は苗木を導入することで早期の樹林化を図る緑化工法であり,近年では自然林に近い群落の成立を目指した導入種や植栽手法に関する新たな取り組みがされている。本研究は,植栽施工から13年が経過した盛土法面における成立植生を明らかにすることで,植栽工による植生回復に関する知見を得ることを目的とした。
調査対象地は滋賀県大津市に位置する新名神高速道路の盛土法面とした。当該法面では,周辺現存植生の主要構成種であるアカマツ及びコナラの植栽がされている。10m×10mのプロットを3点設置し,プロット内に生育するすべての維管束植物を対象として出現種及びBraun-Blanquet法による種別の被度・群度を記録した。また,樹高1.3m以上のつる性を除く木本のDBH及び樹高を測定した。
調査プロット(合計300m2)内で,木本14種,草本11種,つる性植物2種,同定不能2種の合計29種が確認され,優占種はアカマツであった。毎木調査の対象となる1.3m以上の木本は109本(個体密度3633.3本/ha),4種確認され,最大樹高は7.32m(アカマツ),平均樹高は4.18m,最大DBHは13.0cm(アカマツ),平均DBHは5.5cmであった。群落構造の指標として高さ階層別の積算植被率を算出した結果,3プロット全てで1.3m以下の階層の積算植被率が上層よりも低い傾向が示された。植栽木であるアカマツ及びコナラを除く木本植物については,ウツギの稚樹およびヤマナラシの成木は確認されたものの,多くが0.5m未満の階層に出現する実生であった。植生の概観及び林床の状況からは,現状では植栽されたアカマツの下枝による林床の被圧が示唆されたものの,今後アカマツの下枝の減少に伴う林床の光環境の改善が予測でき,継続的なモニタリングの必要性が示唆された。