| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-019  (Poster presentation)

ボルネオ北部熱帯山地林における土壌酸化還元電位と樹木群集組成の関係

*大平渓子(京大・農・森林生態), 相場慎一郎(鹿大・理工), 辻井悠希(京大・農・森林生態), 北山兼弘(京大・農・森林生態)

熱帯山地では、高標高の低温下で雲霧が発生し過湿な土壌が形成される。過湿条件下の土壌では酸素が不足し、還元的になり、還元化に伴う化学特性の変化が樹木群集組成に変異を引き起こす可能性がある。そこで、雲霧発生頻度が異なる様々な熱帯山地林で土壌の還元度と樹木群集組成の関係を調べた。
本研究はマレーシア・サバ州(ボルネオ島北部)のキナバル山とその周辺の山地帯で実施した。計12 個の0.125haプロットを標高1900~2800mの2つの母岩上に設け、樹木の胸高直径測定と樹種同定を行った。また、土壌の栄養塩量と酸化還元電位を測定した。酸化還元電位は酸化還元状態の指標値である。Bray-Curtis類似度を使い、属組成に基づきクラスター解析を行い、山地林を分類した。分類した山地林タイプと土壌の対応関係を調べた。
クラスター分析から、全12プロットはマキ科針葉樹と特定の広葉樹が数属優占する針広混交林型とそれらを欠く広葉樹型に2分された。針広混交型に含まれるプロットの平均可溶性P濃度と平均硝酸態N濃度は、広葉樹型と比較して有意に低かった。熱帯山地林は貧栄養として知られていたが、その中でも特にN・P可給性が低い立地では針広混交林型の山地林が成立すると思われる。針広混交型には、蛇紋岩母岩のプロット(標高2000~2800m)と、非蛇紋岩母岩の非常に還元的な土壌のプロット(標高1900m)が含まれた。蛇紋岩プロットはいずれも、雲霧発生頻度によらず酸化的な土壌であったが、これは疎水性の鉱物組成を反映していると考えられる。土壌の酸化還元度が対照的であるにも関わらず針広混交型が一様に低い土壌N・P可給性を示した理由として、蛇紋岩では母岩由来のPが少なくこれがN無機化を制限するためであり、一方で非蛇紋岩上の還元プロットでは土壌の還元化で有機物分解が抑制されるためと考えられる。以上のことから、土壌の還元化はN・P可給性の低下を招き、樹木群集組成に影響を与えている可能性が示された。


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