| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-030 (Poster presentation)
地球環境の変化や人為改変などにより生育地の変化が懸念されている今、遺伝資源の生息域外保存の重要性に対する認識が高まっている。生息域外で保存しようとした時、樹木は大型のために成体のまま保存するというのは広大なスペースと維持管理コストが必要となり非効率的である。一方種子の形での保存は限られたスペースに多様な遺伝資源を保存できる点で効率的である。しかし、種子は乾燥耐性のあるものとないものにおおよそ分けられ、乾燥耐性のない種子は保存期間が長いと乾燥により死亡してしまうため、長期保存には向いていない。種子による遺伝資源保存を行うためには種子の乾燥耐性を調べる必要がある。そのため、本研究では乾燥耐性の有無を種子形質から推定した先行研究を参考に、日本産の樹種についてSCR (Seed coat ratio、胚珠に対する種皮の割合) と胚珠重を測定した。SCRと胚珠重から推定できる乾燥耐性が先行研究と同様であると仮定した場合、日本産樹木の種子では乾燥耐性のない種子は少なかった。ただし、この結果は単に日本産樹木の種子には乾燥耐性があるという結果ではなく、乾燥耐性のない種子を採取することができなかったことが影響した可能性がある。また、保存していた一部の種子にTTC染色により生存の有無を確認し生存率を算出した。生存率を目的変数、SCRと胚珠重・種子の保存期間を説明変数とし、二項分布を仮定した一般化線形混合モデルを作成したところ、SCRが高いほど生存率が高く、保存期間が長くなるほど生存率が下がり、胚珠重は関係がないという結果が得られた。日本産樹木の種子も先行研究同様、SCRを用いて乾燥耐性の有無を判定できる可能性がある。