| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-033  (Poster presentation)

白花のエンレイソウ属植物の系統関係に関する新知見

*相田大輔, 大原雅(北海道大学環境科学院)

日本には9種のエンレイソウ属植物が生育する。そのうち、1996年に新種として報告されたカワユエンレイソウ(Trillim channellii ,4倍体 ,以下カワユ)を除く8種に関してはオオバナノエンレイソウ(T. camchatence ,2倍体 ,以下オオバナ)、エンレイソウ(T. apetalon ,4倍体)、ミヤマエンレイソウ(T. tschonoskii ,4倍体 ,以下ミヤマ)を基本種とした種間交雑および染色体の倍化により種分化が生じたことが明らかになっている(Kurabayashi 1957)。本研究は、未だに種形成過程が明らかになっていないカワユを含め、オオバナ、ミヤマ、その交雑により形成された3倍体シラオイエンレイソウ(T. hagae ,以下3倍体シラオイ)、3倍体の染色体倍化により形成された6倍体シラオイエンレイソウ(以下6倍体シラオイ)の、白花種5種に焦点を当て、それらの種間関係を明らかにすることを目的として行った。 オオバナ、ミヤマ、3倍体シラオイの3種は北海道の広域に分布する一方、6倍体シラオイは平取と網走(鮫島・鮫島 1987)、カワユは発見された川湯温泉周辺(Fukuda et al. 1996)の限定された地域にのみ生育する。今回、この3つの生育地のエンレイソウ属植物に関して、フローサイトメトリーによる染色体の倍数性の調査及び、花器形態の比較を行った。その結果、これまでカワユ(4倍体)とされてきた川湯地方のエンレイソウ属植物は、いずれも6倍体の特徴を示した。また、花器形態に関して、川湯地方の6倍体は、網走に生育する6倍体シラオイと同様の形態的特徴を持つことが示された。 従って、川湯地方に生育する白花のエンレイソウ属植物はカワユではなく、6倍体シラオイである可能性が高くなった。本発表では、川湯、網走地方で行った繁殖能力の調査の結果や、葉緑体遺伝子の解析の結果もあわせ、北海道の各地で生育する白花のエンレイソウ属植物の種分化について考察する。


日本生態学会