| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-038  (Poster presentation)

積雪がもたらすブナ・ミズナラの空間分布とその生成要因

*白濱千紘(弘前大学), 織部雄一朗(森林総合研究所), 宮沢良行(九州大学), 石田清(弘前大学)

多雪地において、積雪は森林群集の種構成や分布に大きな影響を与えている。落葉広葉樹ブナとミズナラは多雪地の森林で混交林を形成するが、ミズナラは優占種にはなれず、その原因に関わる詳細なメカニズムは分かっていない。多雪地におけるブナ・ミズナラの共存実態や気候温暖化が多雪地の森林の種構成に及ぼす影響を予測するうえで、ミズナラが多雪地で優占できない理由を解明することは重要である。
本研究では、ブナ・ミズナラ混交林において成木の空間分布と積雪環境との関係を明らかにするとともに、両種の生育地分化のメカニズムを道管形成時期と開葉時期の視点から検討することを目的とした。
調査は青森県八甲田連峰の積雪環境の異なる3地点で行った。
その結果、積雪深が深く、雪圧が大きい場所ではブナが、積雪の少ない風衝地ではミズナラが優占する傾向が見られた。このようなすみ分けの成立については積雪以外の要因も関係していると考えられる。
さらに、ミズナラの樹幹下部は上部よりも道管形成が遅れる傾向が認められた。一方で、同じ開葉フェノロジー段階でみると、道管形成時期に差は認められなかった。また多雪地ではブナとミズナラ両種ともに開葉の遅れが見られた。これらのことから多雪地のミズナラでは道管形成が遅れることで通水時期が遅れ、その結果として開葉と光合成開始の時期がさらに遅れる可能性が示唆された。ブナについては道管形成の遅れによる光合成時期の遅れは生じないものと思われるが、積雪によって何らかの悪影響を受けている可能性がある。
本発表では、多雪山地におけるブナとミズナラの成長量の違いについての結果も加え、両種の生育地分化のメカニズムについて議論する。


日本生態学会