| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-039 (Poster presentation)
固着性である植物にとって、個体が雌雄に分かれることは個体群維持の点で不利だと考えられる。例えば、花粉制限が強いこと、集団の種子生産量が少ないこと、種子散布範囲が狭いことなどがあげられる。このような雌雄異株植物が進化の過程でどのように生じ、どのように個体群を維持しているのかは以前より議論されてきた。しかし、個体群動態を直接示す特性を扱った研究は少なく、個体群動態の特性と性表現の関係はほとんど研究されていない。
そこで本研究では、雌雄異株植物の個体群動態の特徴を明らかにするため、マレーシアのランビル国立公園に生育する1173種の樹木を対象とし、属レベルの性表現の系統関係を調べた。さらに生態特性(最大幹直径、死亡率、更新率、直径成長率、総個体数、属内種数)との関係を、系統関係を考慮して解析した。
その結果、両性から雌雄異株への進化は、複数の科において独立に起こっていたが、その生じ方には系統による偏りがあった。また、雌雄異株樹種が含まれる属は同所的に生育する属内種数が多い傾向があった。次に、性表現と生態特性の関係の解析から、雌雄異株樹種と両性樹種の間で、死亡率、更新率、直径成長率に差はなかった。一方、雌雄異株樹種は最大幹直径が小さく低木に多いことが示唆された。先行研究より、低木は相対的に小さい個体も開花することが知られているため、雌雄異株は早熟性を持つと考えられた。また、雌雄異株樹種は、総個体数の少ない属や多い属には見られず、総個体数が中程度の属に多かった。これは、雌雄異株樹種は個体数を大きく増やすことが難しく、少ない総個体数では繁殖における不利が顕在化するために個体群を維持できないからであると考えられた。