| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-052  (Poster presentation)

ブナ・アオモリトドマツの成木は雪を介して稚樹の分布に影響を与えるか -林内の積雪分布を用いた検証-

*日下部玄(弘前大学), 鳥丸猛(三重大院生資), 石田清(弘前大学)

多雪地域において、降雪・積雪環境は森林植物の生存・存続を規定する重要な要因の一つである。一方で森林の構造や種構成は雪が下層へ及ぼす影響を変化させ得る。森林での樹冠下の積雪は樹冠での降雪の蓄積により減少する。樹冠下での積雪の減少量は落葉樹林と比べて常緑樹林で大きいことが知られているが、落葉樹と常緑樹が混交する天然林での積雪分布に関する研究は少ない。樹冠下における積雪の減少が早春の消雪時期を早期化させ、このような場所が春植物の生育適地となることが示唆されていることから、下層の稚樹についてもその分布・更新に積雪・消雪時期が影響すると考えられる。
以上の視点から本研究ではブナ・アオモリトドマツ混交林において、落葉樹冠(ブナ成木)と常緑樹冠(アオモリトドマツ成木)が樹冠下の積雪深に及ぼす影響及び、稚樹の分布・更新に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的に調査を行った。
青森県八甲田山系のブナ・アオモリトドマツ混交林に0.64haの方形区を設定し、成木と稚樹の樹種・サイズ・位置、ササ被度、落葉樹着葉前と着葉期の光環境、冬~春の積雪深を測定し、一般化線形モデルを用いて成木と積雪深との関係、稚樹の個体数・サイズと環境要因との関係を分析した。
その結果、冬期においてアオモリトドマツ樹冠下ではブナ樹冠下よりも積雪深が浅いことが示された。一方で早春においてはアオモリトドマツ成木と比べてブナ成木において幹サイズが樹冠下の積雪深に及ぼす影響が大きく、ブナ樹冠下ではアオモリトドマツ樹冠下と比べて早春の融雪が早いことが示唆された。従ってアオモリトドマツ樹冠下では早春における積雪深は浅いものの、消雪時期が早いとは限らないと考えられる。
稚樹の分布についてみると、稚樹個体数に影響を及ぼす要因はブナ・アオモリトドマツ稚樹でそれぞれ異なるものの、両種共に積雪の影響は他の環境要因に比べて相対的に小さいことが示された。


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