| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-053  (Poster presentation)

ウコギ科カクレミノにおける個葉形質の変異と光環境の関係

*越智和子, 青山香乃, 笠木哲也(公立鳥取環境大学)

ウコギ科カクレミノ(Dendropanax trifodus)は関東地方以西に分布する常緑性の小高木で、主に照葉樹林内に生育する。カクレミノの葉には不分裂葉と分裂葉があり、分裂葉には2裂から5裂までの変異が観察される。カクレミノは葉を互生につけ、シュート内では葉は輪状に配置される。カクレミノの葉の形態変異には、シュート内での葉の配置と個葉レベルでの光環境の違いが影響していると予測された。本研究では、カクレミノにおける葉の分裂の生態学的意義を検討するため、シュート内での個葉の配置と分裂パターンの関係、さらにシュートレベルでの光環境と葉の分裂の関係を調べた。
シュート中心部の相対光量が大きいほどシュートあたりの葉の平均分裂数が少ない傾向があった。これは、光環境が有利な場所に位置するシュートでは不分裂葉や分裂の少ない葉が多いのに対し、光環境が不利な場所に位置するシュートでは多裂の葉を多く生産するためと考えられた。また、多裂の葉ほど葉幅が広かったが、長い葉柄によって輪状な葉の配置の外側に位置していた。そのため、シュート内の葉数や平均分裂数に関係なく相互被陰率は約25%で一定であった。カクレミノは、各シュートの光環境に応じて個葉の分裂数と配置を変異させることにより、受光のための空間を獲得していると考えられた。また、分裂数が多いほど葉が薄く、さらにLMAも小さく、陰葉的な傾向を示した。
以上から、カクレミノでは、光環境の良好なシュートには陽葉的な形質特性を示す不分裂葉が多く配置され、光条件が不利になると陰葉的な特性を持つ葉幅の広い分裂葉がシュート外縁に配置されることが明らかになった。カクレミノの分裂葉は弱光下での同化産物の生産量維持に機能していると推測された。


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