| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-057 (Poster presentation)
カタクリは自然条件下では種子繁殖を主とし、通常、栄養繁殖は行わないと考えられているが、鱗茎には付属部が形成され、鱗茎と分離されることで栄養繁殖が可能になることが示唆されていた(河野、1988,2004)。
これまで演者らは、付属部を人為的に分離した付属体により栄養繁殖が実際に可能であることを確認し、さらに、出芽した際の葉サイズが相対的に種子繁殖由来の同年生のものよりも大きいことから,開花までに至る年数の短縮に繋がる優位性を見出した。
本研究では、付属体からの栄養繁殖の実態を明らかにするため、付属体を人工的な低温条件下(5℃)および自然条件下で管理し、定期的に観察を継続した。
2016年9月20日採集後、低温条件下で管理した付属体は、翌年2017年1月11日から、付属体の表面から位置を定めずに形成された白色の突起物を確認した。その後、突起物は重力方向に肥大し、特に1月から6月にかけて顕著な肥大がみられた。9月から一部の付属体において肥大した突起物からの発根が観察された。
2016年11月8日に植付け、自然条件下で管理した付属体では、翌年2017年春には地上部の出芽はみられなかった。同年7月に付属体を掘り上げ観察を行ったところ、42%の付属体で突起物が形成されていた。一部の付属体では、1つの付属体から2つの突起物が形成されていた。2018年1月25日に温室へ移動させ、観察を継続したところ、同年2月以降に地上部の出現がみられはじめた。
以上、付属体表面の不定位置からの突起物の形成、すなわち不定芽形成が付属体による栄養繁殖を可能にしていると判断された。この付属体からの不定芽形成には、付属体の大きさや母球からの位置も関与していることが示唆された。