| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-059 (Poster presentation)
全ての株が両性花と雄花を咲かせる“雄性両全性同株”は、非常に稀な性表現(約1.2%)であるが、世界で約4000種、複数の分類群で独立に進化している。雄性両全性同株の中には、資源制限下で可塑的に雄花生産を行う種が多く知られている。これらの種では、雄花は、両性花に比べて花サイズが小さいものが多い。しかし、雄花の花サイズが小さくなることは、“訪花頻度の低下”や“花形態と送粉者のマッチングの低下”を引き起こすことで、花粉親としての成功に負の影響を与えることが予測される。しかし、このような雄花の小型化に伴うデメリットが存在するのか、また、デメリットの軽減のための適応が雄花でみられるのか、について検証された例はない。
本研究では雄性両全性同株のツユクサ(Commelina communis)を対象とした。ツユクサは、送粉者誘因のための目立つ青色の花弁を持つ、左右相称花である等、花の小型化に伴う個花あたりの訪花頻度の低下や送粉者とのマッチングの低下が起こることが予想される。本種を用いて、花形態形質と送粉昆虫の訪花行動を両性花と雄花とで詳細に比較することで、「雄性両全性同株で一般的な雄花の小型化は、送粉プロセスにおいてデメリットがあるのか」「そのデメリットを軽減するために、雄花に特有の花形態がみられるか」について検証した。
調査の結果、花弁サイズは雄花の方が両性花よりも小さく、訪花頻度も雄花で有意に少ないことが明らかになった。しかし、送粉昆虫へ花粉を付与する機能を持つ長雄蕊の花糸の長さは両性花と雄花で差がなかった。このことは、雄花は花の小型化に伴い、訪花は減少してしまうが、送粉昆虫と長雄蕊のマッチングを保証していることを示唆している。本研究から、ツユクサは花器官への資源配分を両性花と雄花で変えることで、雄花による繁殖成功を保証していることが示唆された。