| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-108  (Poster presentation)

生殖隔離を引き起こすアカショウビンの鳴き声の地理的変異

*植村慎吾(北海道大学理学院), 浜地歩((株)プレック研究所), 高木昌興(北海道大学理学研究院)

生態学的種分化は異なる環境に生息する同種の集団間で遺伝子流動が減少することに起因する。鳥類では、生息地の音響環境の違いに応じて、さえずりに使われる周波数帯が変化することが示されてきた。異なるさえずりをもつ者同士では、同種間でも同性間競争の成立しづらく、異性の反応が低下しやすいことが原因となって生殖隔離が起こり、遺伝子流動が減少すると考えられる。音響環境は音の減衰率と環境騒音の周波数分布で表される。一般的に、低緯度地域ほど、密な植生が高周波数音の減衰を起こしやすく、昆虫などによる高周波数帯での環境騒音が大きくなる。このため、先行研究における種間比較では、低緯度地域に生息する森林性鳥種ほど低周波数域でさえずる進化的な制約を受けていた。
 しかし、先行研究では、個体群間での音響環境に応じたさえずりの違いと集団の遺伝的構造は必ずしも対応関係がなかった。これは、先行研究で対象とされた鳥種がさえずりを学習する鳴禽類であり、出生地外の生息地に分散した場合にも分散先のさえずりを学習できるため、出生地外への分散を妨げない。本研究では、生得的なさえずりを持つとされるカショウビンを対象として、南西諸島の6島で音響環境とさえずり周波数の違いを調べた。
アカショウビンのさえずり周波数は島間で異なることがわかった。また、実験的にさえずりへの反応の強さを調べた結果、同じ島由来のさえずりにのみ強く反応した。さえずりへの反応の違いは、同類交配による生殖前隔離の存在を示唆する。一方で、生息地間の音響環境にははっきりした違いを見つけることができなかった。これらの結果に加え、集団遺伝的解析も踏まえ、音響環境がもたらす、さえずりの生殖前隔離としての機能について検討する。


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