| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-116  (Poster presentation)

キイロショウジョウバエの共食い行動に重要な要因は何か?:人為選抜実験による検証

*牧元錬太郎(岡山大学 農), 高橋一男(岡山大学 環境生命)

近年、腐食性昆虫であるキイロショウジョウバエが貧栄養条件下で共食いを行う事が発見され、傷ついた老齢幼虫が、若齢幼虫に食われる傾向がある事が分かっている。特に、落下果実などの短命で小さな資源を利用するキイロショウジョウバエにとっては、高密度条件や貧栄養条件下では、共食い行動は適応的と考えられている。先行研究により、キイロショウジョウバエの若齢幼虫は、近傍に存在する傷ついた老齢幼虫を探索する能力(共食い探餌能力)と、老齢幼虫のみを餌として発育する能力(共食い採餌能力)を持つことが示唆されている。共食い採餌能力は、貧栄養条件もしくは共食いを経験する事で可塑的に上昇する可能性が示唆されているが、野生集団の共食い探餌能力と採餌能力が環境によって決定されているのか、遺伝し、かつさらなる進化のポテンシャルを有しているかどうかは未解明である。本研究では、まず、キイロショウジョウバエの野生型集団の共食い探餌能力と採餌能力に8世代の人為選抜を掛け、共食い行動の進化的ポテンシャルを検証した。共食い能力の選抜では、1000個体の選抜集団について、まず共食い探餌能力の高かった上位30%の個体を選抜し、採餌能力の選抜によってさらにその中の上位30%の個体を選抜し、合計90個体を次世代の親として用いた。対照集団は、選抜集団と同じ初期集団から、ランダムに90個体を次世代に親とすることで維持した。7世代選抜後の選抜集団と対照集団について、共食い性に環境と選抜処理が与える影響を検証するために、選抜集団と対照集団の幼虫を2つの栄養条件(富栄養もしくは共食い餌のみ)で飼育した後に、共食い能力を比較した。今回の講演では、共食い探餌能力の結果のみを報告する。また、キイロショウジョウバエの野生集団が持つ、共食い性の進化のポテンシャル及び、可塑性の効果について考察したい。


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