| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-118 (Poster presentation)
相利共生系において、毎世代ごとに環境中から新たに共生者を獲得する必要がある水平伝播を用いる系では、共生者を再び環境中へと放出する機構が共生系を維持する上で必要不可欠である。しかし、深海に生息するハオリムシでは共生者を放出する機構が無く、一旦取り込まれた共生者が再び環境中へと戻ることができるのはホストが死亡したときのみである。更に、ハオリムシの中には非常に長寿で200年以上生きるものもいるため、共生者の放出というイベントが非常に稀になってしまう。したがって、「ホストが死ぬまで共生者は放出されない」という戦略は共生系維持という観点からするとミスマッチなものに思える。
本研究では共生者の環境中への十分な供給が必須な水平伝播系で何故このような戦略が進化し得たのかを理論的に解明するために、共生者のホストからの脱出とホストによる共生者の閉じ込めとを進化形質として共進化モデルを構築、解析を行った。
その結果、パラメータや進化前の形質に依存して、[1]共生者は脱出を行わず、ホストによる閉じ込めも行われない、[2]一部の共生者が定期的に脱出を行い、ホストはそれを許容する、[3]共生者は無際限に脱出を行い、それに対するホストによる閉じ込めも無際限に増大する(軍拡競争)という進化が起こることがわかった。また、[1]と[3]、[2]と[3]はそれぞれ双安定となる場合もあった。発表ではこれらの進化結果について詳しく議論する。